墨田区内の個人店を応援することを目的に、2006年より墨田区商店街連合会が発行を開始した「すみここ」(前身、すみだ個だわりショップ)。墨田区商店街連合会の活動や、商店街の重要性を、同会の会長、山田昇さんにお聞きしました。
1948 年墨田区生まれ。
菓子製造販売や鶏卵卸を手がける「山七食品」社長。
錦糸町駅南口で人形焼き店「山田家」を展開。
全国商店街振興組合連合会副理事長、東京都商店街振興組合連合会副理事長、
墨田区商店街振興組合連合会理事長、江東橋三丁目町会長でもある。
お祭は地域コミュニティの原点!
商店街では町会やNPO等、さまざまな団体と連携し、お祭やイベントを開催!
私も旅行に行った時など、その土地らしい〝体験〟をしています。先日小田原へ行ったときは、あるお店で「ちくわ・かまぼこ作り」を体験しました。材料となる生地はもうできているので、あとは成型するだけ。ちくわは生地を芯に巻き付けるだけで、すぐにできましたが、かまぼこは難しかった。板の上に生地をかまぼこ型にのせるだけ。だけ、なんだけど、これがうまくいかないんですよ(笑)。それでもなんとか形にしてあとは蒸し器におまかせ。食事に行っている間に完成していて、食べられるのです。作るのもおもしろいし、さらにそれを口に入れられる。いいですね、こういう体験。何かを作った経験は意外に忘れないものです。お土産を買った思い出よりも印象に残るかもしれません。
最近は墨田区も外国人のお客さまが増えています。国内外を問わず、墨田区に遊びにきてくれた人たちが、墨田区ならではの体験ができるといいですね。また、その体験をきっかけに墨田区のファンになってくれたらうれしいです。そのためにも、商店街が機能しなくてはいけない、と思います。
買い物の場のみに留まらない商店街は地域貢献のパイオニア
もともとは買い物の場として始まった商店街ですが、巨大な商業施設が次々と生まれる一方で、地元のお店は廃業し、その結果、食料品の購入や飲食に不便を感じる買い物弱者が増えています。商店街はそんな方々にとって重要な場になっています。また防犯カメラや街路灯の設置、地域の清掃活動、パトロールなど、地域の安心安全に実は大きく貢献しています。そんな商店街が、今危機に瀕しています。後継者不足で閉めてしまうお店が増えたり、大手資本のチェーン店が増えることで、街のルールを守るお店が減少しているのです。特に問題になっているのが質な客引きです。墨田区商店街連合会の働きにより、墨田区では2016年12月1日「墨田区客引き行為等の防止に関する条例」が罰則付きで施行されました。商店街というのは繁華街ですから、さまざまなお店があっていい。でも同じ街で商売をするのだから、ルールは守るべきなのです。「悪質な客引きをしない宣言店」には区が作ったステッカーを配ったり、それら一部の店舗を掲載したマップを作るお手伝いをしています。商店街はその他、町会やNPOなどさまざまな団体と連携して、お祭やイベントを開催しています。そのひとつに、「まちゼミ」というイベントがあります。これは商店街に加盟しているお店が中心に講師となって、プロならではの専門的な知識や情報を、少人数の受講者に伝える催し。なかには、ある豆腐店が味噌づくりを教えてくれる講座なんてものもあります。大豆のプロが教えてくれる味噌づくりだから、おいしくないわけがない。こういったお祭やイベントには、商店街に加盟しているお店は参加しやすい条件にするなど工夫をしています。商店街に加盟したほうがお得だ、と思われるような組織にしていかなければならないと思っています。
従来の商品に比べ低消費電力、低CO2排出量、高耐久性で注目されるLED。商店街では街路灯のLED化を積極的に進めている。
「悪質な客引きをしない宣言店」掲載マップ
「悪質な客引きをしない宣言店」ステッカー
専門家集団、それが商店街。生活の知識を得られる生きた辞書
2018年2月に開催した 「ひきふね まちゼミ」のチラシと店主たち。2度目の開催となる今回は、30店舗が参加、41講座が開かれた。
「まちゼミ」に象徴されるように、商店街のお店のオーナーはその道のプロ。だからこそ、決して安全でなものは提供しません。大手メーカーが作る和菓子やケーキは購入してから賞味期限まで数日あります。個人経営の和菓子やケーキは翌日には固くなったり風味が落ちてしまう。大手メーカーの作る玉子サンドは三日たっても腐りません。個人経営のパン屋やべーカリーの玉子サンドはお店の人がちゃんと「今日中に食べて」と声をかけてくれたり、賞味期限を当日中にしています。どちらが体にやさしいのかは、一目瞭然。個人経営のお店が作ったものは、日持ちはしないけれど、余計なものの入らない安心安全な、ホンモノの商品を提供しているのです。
このサイトで紹介している「菓子遍路 一哲」さんでは、うぐいすの上生菓子を作る体験を行う際に、うぐいすは春告げ鳥と教えてくれるそうです。江戸文字を書く体験ができる「アトリエ創藝館」では、江戸文字を使った百貨店の「三越」のロゴマークの字にヒゲが何本あるか、その理由を教えてくれるそうです。商店街の店のオーナーは、その道のプロ、つまり商店街は知識の詰まった場でもあるのです。商店街を利用することで、生活に必要なこと、プロでなければわからない知識を得ることもできる。素敵ですよね。今後は、「墨田区客引き行為等の防止に関する条例」施行で満足せず、国単位で大きなお店、大きな資本が地域を荒らすことのない法律等が定着してほしいですね。今、私たちは商店街の役割や地域への貢献を、スマートにアピールする方法を模索しています。安心安全な商品を提供するだけでなく、知識も豊富な商店街。ホンモノがほしいなら商店街へ、というイメージを確立していきたい。そして、商店街がなくなると困る、と地域住民が切に願ってくれるような商店街になるまで成長しなければなりません。最近では若手のお店のオーナーも増えています。多くの声を取り入れ、地域の皆さまにより愛される商店街になるよう歩み続けます。